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20160912:最近要約したSS

僕がショートストーリー、いわゆるSSを要約するバイトをしているのは以前書いた通りだ。他に書くこともないので、最近ネットで拾い読みしたSSの中で特に気に入った2作品を紹介してみようと思う。一応これらはコンペ選考中の作品らしいのでタイトル・作者名は伏せる。

 

 ①サバイバル島村卯月
ジャンル:アイドルマスターシンデレラガールズ、サバイバル、不条理
内容:ある日島村卯月が目覚めるとそこは広大な荒野で、彼女の首には不気味な装置の付いたチョーカーが巻き付いていた。近くに置いてあったホワイトボードには、その装置の正体がセンサー付き爆弾であり目覚めた地点から半径10kmの範囲外に出ると爆発するという説明書きが残されていた。初めのうちは半径10kmの無人地帯で生き抜く術を知らなかった卯月も、随所に配置されたサバイバルガイドを手にすることで強く成長し、岩山のボスたるサーベルタイガーとの一騎討ちに挑む程の力を得る。手製の黒曜石ナイフで虎の喉元を切り裂いたその瞬間、周囲でファンファーレが鳴り響き、「ドッキリ大成功」のフリップが掲げられる。346プロの同僚たちから「よく頑張ったね!」と拍手喝采で迎えられる卯月であったが、言語文明から遠ざけられていた彼女にはその言葉が理解できず、環境すべてが敵であるという野生の本能のままに同僚たちを惨殺してしまう。血溜まりの中でひとり叫び声を上げる卯月。これからどうなってしまうのだろうか。
感想:無力な少女が自然の中で生き抜くスキルを獲得する過程を描いたSSは流行りつつあるが、その中でも描写のホンモノっぽさを感じさせる作品は稀有なもので、「2ヶ月山籠りして書きました」という作者のあとがきも真に迫る雰囲気がある。気になる部分はいくつかあるが、サバイバルガイドを頼りに生存した卯月が言語文明を完全に忘却したというのは作者自身も違和感があったのだろうが、若干強引な論理展開が進行していたように思う。最後の敵がサーベルタイガーというのは意味不明だが、終盤の戦闘描写の緻密さと勢いにより押し切ることに成功している。いま一番人に薦めたいSS。

 

②異界迷い込み緒方智絵理

ジャンル:アイドルマスターシンデレラガールズ、異界もの
内容:四つ葉のクローバーを探しに出掛けた緒方智絵理。初めのうちは植物好きなアイドル仲間たちと楽しく探し回っていたが、日暮れ時になっても四つ葉探しに熱中する智絵理に呆れた仲間たちは彼女を置いて帰ってしまう。一人になった後も黙々と四つ葉探しを続ける智絵理であったが、次のスポットへと向かう高架下のトンネルを通り抜けるときに怪しげな老婆に声を掛けられる。"四つ葉のクローバーがたくさん摘める場所があるよ"、そう告げられた智絵理は老婆に言われた通りに道を辿る。振り返りながらトンネルを出て、右を見ながら左に曲がる、両目を閉じて7秒歩く、息を止めながら10秒小走り、両手を筒状に丸めて双眼鏡のように覗きながら前進、曲がり角を270°回って右折して、駆け抜ける。一本道の突き当たりには空き地があり、そこには一面に四つ葉のクローバーが生い茂っていた。「みんなの分も摘んで、幸せを分けてあげよう!」と四つ葉を摘んでゆく智絵理。両手いっぱいにクローバーを抱える頃には完全に夜になっていた。慌てて来た道を戻る智絵理だが、どうしても老婆とすれ違ったトンネルに戻ることが出来ない。名前も聞いたことのない町を半分泣きながらさまよう智絵理。とうとう疲れ切ってしまった彼女は偶然通り掛かった民宿に泊めて貰うことになった。お金を持っていないと尻ごむ智絵理に宿主は"代わりにそれを頂こう"と両手いっぱいのクローバーを指差す。彼女は少し躊躇った後にそのクローバーを差し出し、案内された部屋で眠りに就く。朝、目を覚ました智絵理はなんとかして件のトンネルに辿り着き、見知った場所へ帰ることが出来た。心配したらしい両親や同僚に「四つ葉のクローバーを探していて…」と説明する智絵理だが、どうにも納得して貰えない。その後いつもの公園へクローバーを摘みに出掛ける智絵理だが、辺りの様子に違和感があった。違和感の正体に気付いた、その公園には四つ葉のクローバーしか生えていなかったのだ。公園を出たあとも何処を探しても三つ葉のクローバーを見付けられない智絵理は途方に暮れ、SSは幕を閉じる。

感想:異界迷い込みものは若干廃れつつあるジャンルですが、その分野と「引っ込み思案な女の子」との相性はやはり抜群で、内気な緒方智絵理が自分なりの幸せを喪失する展開にはゾクッとした。物好きさんにおすすめです。